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ロータリーエンコーダの種類

ロータリーエンコーダは回転方向の機械的変位量を電気信号に変換して把握できるセンサで、産業用ロボットや情報機器の位置決めサーボ系などに多く使われています。

ロータリーエンコーダの計測方法には、インクリメンタル方式とアブソリュート方式の2種類の方法があります。両者の大きな違いはバッテリの有無により、電源が切られた後も位置情報をキープしたままであるかどうかです。

目次

インクリメンタル方式

インクリメンタル方式では、測定を開始した地点から回転角度に応じた周波数のパルスを発生させて位置を読み取ります。工作機械やロボット、計測機器にあるサーボモータの速度コントロール、位置制御、回転数の把握、パルス発生器などに使われています。

インクリメンタルエンコーダの構造

一般的にロータリーエンコーダでは2相の異なるパルス列を出力しており、それらの位置関係から位相弁別回路とアップダウンカウンタで位置情報がわかる仕組みです。ある位置から次の位置までの移動量を検知することから、相対角度検知タイプとも呼ばれています。

例えば、光学式によるインクリメンタル方式のエンコーダは、回転円盤、固定スリット、発光ダイオード、フォトトランジスタで構成されています。円盤のスリットに対して固定スリットが90度程の差がでるようにされており、出力信号はA相とB相の2信号を発信。2つの信号の差から回転方向を検出します。また、原点信号であるZ相を出力する製品もあります。

インクリメンタル式のメリット・デメリット

アブソリュート方式ではバッテリを使うことで電源が切れても位置情報を持ち続けることができますが、インクリメンタル方式ではバッテリを使用していないので、電源を切るとエンコーダに位置情報が届かなくなり、位置情報が消失されてしまいます。そのため、再起動した際には原点復帰運転で位置情報を再度検出する必要があり、稼働のための一定の時間が必要になります。

位置情報の再検出という手間はかかりますが、バッテリを含んだ準備やメンテナンスなどの手間はかかりません。また、インクリメンタル式ではスリットが1列しかないので、コードホイールの製造コストを安価に抑えることができます。

アブソリュート方式

アブソリュート方式では、回転角度の絶対値を出力します。主に工作機械やロボットにあるサーボモータの位置制御に使われています。

アブソリュート方式の構造

アブソリュート方式では、原点に対して1回転もしくは複数の回転で角度や位置を計測します。この、原点からどれくらい離れた位置にあるのかを検知することから、絶対角度検知タイプと呼ばれています。

入力軸の角度位置に対応したコード信号が出力され、受信側でコードを読み取り位置を把握。この際に使われるコードには、グレイコード(交番2進コード)や2進コード、BCDコードがあります。前回取得した情報が残っているので、電源を入れればすぐに続きをスタートさせることができます。

その構造は、発光ダイオード、回転盤、固定スリット、フォトトランジスタで構成。回転スリットが中心から同心円に並べられており、スリットは内側から2パルス・回転の2進符号列になっています。

インクリメンタル方式ではスリットが1列ですが、アブソリュートでは複数列になるので、スリット数が多いほど角度変化を測る能力も高くなり、移動量をより細かくキャッチすることが可能になります。ただ、アブソリュート型で使われるスリットはインクリメンタル式よりも複雑なので高い技術が必要。スリットにかかる費用も高額になりやすいです。

アブソリュート方式のメリット・デメリット

アブソリュート方式では電源の他にバッテリを使用しています。バッテリを使う事で、電源を切って再起動した際に、電源を切る前の位置情報をそのまま保持・管理して計測をスタートさせる事が可能。インクリメンタル方式のように位置情報を再検出する原点復帰運転が不要なので、タクトタイムの短縮にもなるだけでなく、原点センサやリミットセンサが不要になる場合も。コストダウンと配線のコンパクト化につながります。

ただ、バッテリの寿命を考えた定期的なメンテナンスが必要な事からも、その分のコストや維持管理・交換の手間がかかります。バッテリの交換の際には一時的に電気の供給が失われ位置情報が消失してしまうので、その際にはインクリメンタル方式のように再度原点調整が必要になります。

また、バイナリーコードをデジタル信号化する方法とアナログ電圧に変換出力する方法とあり、前者ではさらにパラレル出力とシリアル出力とに分けられます。デジタル信号はノイズに強いといったメリットがありますが、パラレル出力は信号線が多くなります。シリアル出力は通信に時間がかかるので、現在位置がずれてしまう事も。アナログ信号は時間に遅れにくいもののノイズに弱いといったデメリットがあるので、使用の用途に合わせて選ぶ必要があります。

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