測定物の位置や回転などの動きを電気信号に変換して出力する装置エンコーダ。主にモーターを使用する産業用ロボットで使われているエンコーダの基本知識やQ&Aなどをご紹介しています。
エンコーダ(Encoder)とは、回転角や直線変位、速さを検出し符号化するセンサのことで、電気信号で位置を知らせる装置です。
測定対象品の回転角から読み取るのをロータリーエンコーダ、直線変位から読み取るのをリニアエンコーダと呼ばれています。位置の変化を計測する検出方法には、光や磁力、電磁誘導などが使われており、光学式エンコーダ(インクリメンタル方式、アブソリュート方式)と磁気式エンコーダとあります。
エンコーダは工場で使われている組み立てロボットや溶接ロボット、無人搬送機、マシニングセンターなど、主にモーターを使用する産業用ロボットで使われています。なかでも代表的なのが、ステッピングモーターとサーボモーターです。
ステッピングモーターは主に製造現場で使われており、パルス信号で回転速度・回転角度をコントロールするモーターです。エンコーダを使ってフィードバック制御するクローズドループ方式と、エンコーダを使用しないオープンループ方式の2種類あります。
サーボモーターは移動距離や回転角をコントロールして直線もしくは回転運動の速さをキープ。産業用ロボットや自動車、エレベーター、無人搬送機などでよく使われています。
ロータリーエンコーダは測定物の回転する動きを検知し、その回転数・回転角度・回転位置などを電気信号にかえて検出するセンサです。
測定方法には、回転位置の相対値を測定するインクルメンタル式と、回転位置の絶対値を測定するアブソリュート式の2種類。ファクトリーオートメーションから計測、オフィスオートメーション、医療機器、航空・宇宙産業と幅広い分野において、モーターで駆動する製品に利用されています。
測定方法で一般的に使われているのは、光による光学ロータリーエンコーダです。インクルメンタル式では、回転円盤に空けられた穴に光を通過させ、そのパルス波から回転数を計測しています。アブソリュート式では、回転円盤に位置がわかる溝が付けられており、どの溝を通過したのかがわかります。
アブソリュート式では回転方向も測定可能になっていますが、インクルメンタル式で回転方向を測定する場合、22種類の信号(A相・B相)を用い、その位相関係から回転方向を読み取ることはできます。
リニアエンコーダとは、測定対象物の直線変位を検知するセンサです。主に高精度な位置の把握が必要な産業機器に使われており、複雑な構造で高い技術が必要な事からも、他と比べて高額傾向にあります。
測定方法には移動量距離を測るインクリメンタル型と、位置を測定するアブソリュート型とあり、後者は電源を切って再稼働した際にも現在位置を正確に検出できます。
ただ、特定パターンのスリットや反射板、磁力から位置を測定することからも、距離がないとパターン不足がおこり、補助的な機構が必要になる場合もあります。また、パルス信号から読み取るインクリメンタル型では、連続した動作で位置がずれてしまう事があるので、定期的に原点を復帰させる動作を行う必要があります。
光学式によるリニアエンコーダでは、スリットに光が通過したかどうか、もしくは反射板に光が反射したかどうかで位置を測定しています。水や油、ほこりが発生する場所では正確な測定が難しくなるため、カバーをして測定する必要があります。
ただ、スケールの目盛位置にある磁力変化から位置を測定する磁気式では、水や油、ほこりに強いので、その構造も光学式ほど複雑ではありません。コンパクトタイプで選ぶなら、磁気式となります。
ロータリーエンコーダには、インクリメンタル方式とアブソリュート方式と呼ばれる2種類の測定方法があります。
方式相対角度検知タイプであるインクリメンタル方式では、1枚のスリットを使って位置を読み取ります。絶対角度検知タイプであるアブソリュート方式では、複数枚のスリットを使用し、枚数が多いほどより正確な数値の検出を可能にしています。
2つの大きな違いはバッテリの有無で、バッテリを使うアブソリュート方式では原点復帰運転が不要です。ただ、アブソリュート方式では複雑なスリットを使うので、製品には高い技術力が求められます。
エンコーダで測定対象物の位置を測る際に使われる検出方法には、ポテンショメーターとも呼ばれる機械式(接触式)、回転円盤を通る光で測定する光学式、永久磁石から発生する磁界分布の変化を読み取る磁気式、別名「レゾルバ」とも呼ばれている電磁誘導式の4種類あります。
それぞれ構造上やセンサの特性による特徴があり、メリットだけでなくデメリットも。検知する物理量が違えば検出方法も異なるため、用途に合わせた選択が必要です。
エンコーダの開発から製造、販売とおこなっているエンコーダメーカーの一部を紹介しています。紹介している企業はいずれもエンコーダメーカーとしてノウハウと実績があり、宇宙産業や自動車産業など高度な技術が必要な分野にまで進出。国内だけでなく海外でも活躍するなど、物つくり大国と呼ばれる日本だけあって、どの企業も優れたエンコーダを提供しています。
エンコーダに関する質問やよくある話をご紹介。エンコーダについて詳しいプロが答えます。
エンコーダの分野で一般的に使われている基礎用語や技術用語について、アルファベット順及び五十音順でまとめて解説しています。
Shaft-EndとOff-Axisは、どちらも磁気式エンコーダーの配置の種類です。Shaft-End配置はホール素子・永久磁石・回転軸の中心を同一線上に揃えた配置で、Off-Axis配置はエンコーダーを回転軸の中心からあえてずらすことで回転軸の先端をフリーにできるというメリットがあります。
光学式エンコーダは、コードホイールのスリットを通過した光パルス信号を検出して、電気信号に変換出力する装置です。磁気式よりも精度と分解能を高めやすく、強い磁界が発生する用途にも使用できるというメリットがあります。
主にモータの動きと連携して、さまざまな機器の制御に活用されているエンコーダ。例えば、エレベータの昇降や扉の開閉、印刷物のプリントアウト、CTスキャンなど幅広く利用されています。複数の種類があり、状況に応じたエンコーダを利用できることから活用分野が広がっています。
「校正」とは機器が正常に動作しているか定期的に確認する作業のこと。機器の精度を保ち、製品の品質を向上させるために重要な役割を担います。国際的な商品の流通が盛んになっている昨今、日本だけでなく国際基準での製品の整備が求められています。
エンコーダの市場規模は2024年には51億万米ドル以上、2030年には93億万米ドル以上に達すると予測されています。また、さまざまな産業アプリにエンコーダ技術が取り入れられていることから、今後は産業部門が大きな市場シェアを占めるだろうとのこと。そのほかにもエンコーダをとりまく動きを国別でまとめました。
必要な信号の出力を妨害し、機器の故障や検出の質低下を引き起こすノイズ。エンコーダでは、出力波形の平坦部にヒゲのように現れるノイズが特徴的です。信号線間の浮遊容量が原因で発生するもので、A相・B相の立ち上がり・立ち下り時に現れます。
静電容量式エンコーダはエンコーダの種類の一つで、ローター・トランスミッター・レシーバーから構成されているものです。高周波信号の変化を読み取って回転情報を検出するのが特徴で、環境への耐性や寿命が長いなどの利点があります。
ロータリーエンコーダは、機械の位置や速度制御を支える重要なデバイスです。選定には、アブソリュート形やインクリメンタル形、光学式や磁気式などのタイプや方式を正しく理解することが欠かせません。また、使用環境や必要な精度に応じた適切な仕様の選定が、システム全体の信頼性とパフォーマンス向上につながるでしょう。