オシロスコープによってレゾルバの位相差調整を正しく行うためには、そもそもオシロスコープが正しい測定結果を得られることが前提です。このページではオシロスコープの設定の最適化に必要な校正についてまとめました。
オシロスコープの校正とは、オシロスコープの測定結果が適切に導かれるよう機器の設定や動作環境をチェックし、必要に応じて修正・調整を行うことです。
オシロスコープはレゾルバの位相差調整や電子回路のチェックなどに利用できる測定器ですが、オシロスコープの測定結果の信頼性を維持するためには、そもそもオシロスコープの環境設定が適正化されていなければなりません。オシロスコープを定期的かつ適切に校正することで、測定結果に対する信頼性を担保できるようになります。
オシロスコープはシンプルな測定器であると同時に、様々な計測に応用できる汎用性を備えた電子機器であり、オシロスコープの測定結果の信頼性を維持するためには根本的に「オシロスコープが正しく動作している」という前提が不可欠です。
仮にオシロスコープの測定環境や設定が不適切な状態になっている場合、得られた測定結果は信頼できないものになり、また信頼できない測定結果にもとづいて行われる各種作業はすべて不正確でリスクを抱えたものになってしまいます。
オシロスコープの校正をきちんと実施することによって、適切な測定環境が整えられ、その後の工程についても信頼性を確保できるようになるでしょう。
ここでは一般的なオシロスコープ校正の基本手順をまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
オシロスコープの電源を入れて機能チェックや校正を始める前に、まずオシロスコープの目視検査・外観検査を行って異常の有無を確認してください。例えば、オシロスコープのモニターや本体に不具合がないか検査したり、プローブケーブルに損耗や亀裂がないか確認したりすることは欠かせません。
またケーブル端子の接続や電源ケーブルの接地についてもチェックを行い、接触不良や接続部のぐらつきなどが生じている場合、メーカーへ修理やサポートを依頼することも必要です。
オシロスコープでは、信号伝送を行うプローブのオフセット(補正値)に関する機能があり、例えばアース線とプローブ先端における電圧差の調整を行うために用います。
オシロスコープで正しく測定を行うためには、使用環境や外部からの条件によって生じる不要な電圧差などを解消し、測定対象から得られるデータの確度を担保しなければなりません。プローブオフセット校正の手順としては、プローブの先端をオシロスコープの校正出力へ接続した後、表示された波形が画面のセンターに位置するまでオフセット機能で調整を行います。
オシロスコープのプローブには減衰比が備えられており、減衰比とはプローブの信号振幅を減少させる割合や量を指しています。
例えば減衰比が「1:1」の状態では、プローブの減衰は生じません。一方「10:1」になるとプローブ先端の揺れ幅に対して10分の1へ信号が減少されます。
プローブの減衰を正しく使用することで幅広い電圧範囲の測定を行えるため、測定対象の電圧や条件に合わせて減衰比を設定し、信号振幅が期待値と一致するように校正を行ってください。
オシロスコープで表示される波形において、横軸(水平スケール)は「時間」を意味しており、縦軸(垂直スケール)は「電圧」を表しています。
オシロスコープのスケール校正を行うためには、あらかじめ校正済みの波形発生器へ接続した上で、画面上に波形が正しく表示されるよう調整を行います。あるいはオシロスコープに内蔵されている校正ポイントを使用することも可能です。
オシロスコープにおけるトリガーとは、測定を開始・終了するタイミングを設定する機能であり、あらかじめトリガー設定をすることで入力信号が設定レベルを関知したタイミングでオシロスコープがデータを検出し、周期的な信号波形が視認できるようになります。
トリガー校正ではオシロスコープへ波形発生器を接続し、画面上の波形が安定するように設定を調整します。
オシロスコープと測定対象を接続することを「プロービング」と呼びますが、オシロスコープで適切な測定結果を得るためには、オシロスコープ本体だけでなくプローブの校正も同時に行っておかなければなりません。
プローブの校正を行うためには通常、プローブチップを校正用基準信号端子へ接続し、グランドクリップをグランド端子へ接続、そして方形波基準信号をチェックします。この際、波形が真っ直ぐ表示されない場合はプローブ補正が必要です。
なお、オシロスコープの校正やプローブの校正については各モデルやメーカーによって適切な校正手順や方法がマニュアル化されているため、それぞれのメーカーが提示するガイドラインに沿った方法を厳守してください。
オシロスコープの校正頻度について、国際標準として明確化された校正期間や有効期限は定められていません。ただし、言い換えればオシロスコープの校正はそれぞれの使用環境や測定条件などによって各自で考えるべきとなり、基本的には各メーカーが推奨している「校正周期」を参照します。
多くの場合、それぞれの機器において少なくとも年一回の校正が推奨されていますが、条件によってはさらに短期間で校正すべきケースもあるでしょう。
オシロスコープを適正に使用して、測定データの確度を保つために、メーカーのガイドラインに沿った定期的な校正は不可欠な工程です。しかし、校正はあくまでも機器の補正を行うためのものであり、機器が本来備えている機能を増強したり、すでに発生している不具合を改善したりすることはできません。
そのため、校正を正しく行わなければ正常品でも不正確な測定になると同時に、そもそも不具合が生じている測定器では校正を行ったところで測定結果も不正確になります。
校正による信頼性の維持向上は、あくまでもオシロスコープそのものが正常であることを前提としています。
オシロスコープは様々な計測に使用できる汎用性や利便性に優れた測定器であると同時に、その測定結果を信頼するためには前提としてオシロスコープの動作が正常に行われていなければなりません。
オシロスコープは精密な電子機器であるからこそ、些細な不良や誤差も測定データへ大きく影響してしまう恐れがあります。そのため常にオシロスコープの確度を維持できるよう、適正な校正を定期的に行って測定環境の信頼性を担保しておきましょう。
オシロスコープでレゾルバの位相差調整を実施する場合も、当然ながら適切な校正を行っておき、プロービングから得られるデータの確度を高めておく必要があります。
また適切な使用環境を前提として、オシロスコープで位相差調整を行うためには表示される波形や変化についても理解しておかなければなりません。
当サイトではオシロスコープでレゾルバの位相差調整を行うポイントや解決策をまとめていますので、合わせて参考にしてください。