オシロスコープを取り扱っているメーカーと製品の特徴についてまとめています。また、オシロスコープを選ぶ際のポイントについても紹介します。
オシロスコープとは、電気信号(電圧変動)を画面上に表示し、観測可能にする装置です。時間の経過に伴い、電気信号(電圧変動)が変化する様子が、横軸に時間、縦軸に電圧値が描画されたグラフで表示されます。目に見えない電気の挙動を目に見える形にしてくれるのがオシロスコープなのです。
電気信号の波形や周波数などを測定したり、故障の原因を探ったりするのに役立ちます。オシロスコープには、最初に開発された「アナログオシロスコープ」と現在主流の「デジタルオシロスコープ」に大別されます。
ここでは、簡単にオシロスコープの仕組みを紹介します。
プローブから入力された信号は垂直増幅回路へ伝えられ、この信号を減衰・増幅して、ブラウン管の垂直偏向板に伝えます。垂直偏向板に印加された電圧によって電子線は上下に走査。波形が描画され、画面に表示されます。
入力された信号をA/D変換器によって一定間隔でサンプリングし、デジタル化して数値データとして取り込み、データ処理回路がメモリに保存していきます。所定数のデータを取り込んだら、それらのデータをデータ処理回路で処理。その後、波形として画面に表示します。ここまでの一連の動作終了後、同じ動作を継続し、新たな波形を描き続けます。
目に見えない電気の挙動を目に見える形にしてくれるオシロスコープの使われ方は、おもに下記のようなものです。
このような使い方が可能なため、下記の用途で使用されています。
各種電子機器・部品のメーカー、教育・研究機関などで、おもに利用されています。
最初に開発された「アナログオシロスコープ」と現在主流の「デジタルオシロスコープ」に大別されるオシロスコープですが、「デジタルオシロスコープ」には下記の5種類があります。
デジタルストレージオシロスコープ(DSO)は、アナログ信号をサンプリングしてデジタル化し、メモリに保存して表示するオシロスコープです。データを電子化できることや、単発や繰り返し頻度の少ない現象でも捕捉可能なのがメリットです。デメリットは、一連の処理では1回のサンプリングから次のサンプリングまでの間、デッドタイムと呼ばれる空白時間が発生してしまうことです。
デジタルフォスファオシロスコープ(DPO)は、DSOのデッドタイムの問題を解決し、アナログオシロスコープ並みに少なくしたタイプです。これにより、間欠的な異常を検知する能力を高め、輝度階調表示を実現しています。
ミックスドシグナルオシロスコープ(MSO)はアナログ信号とデジタル信号の両方を表示して比較するのに最適で、ミックスドドメインオシロスコープ(MDO)はスペクトラム・ アナライザとMSOとDPOの機能を1台に統合したタイプです。
デジタルサンプリングオシロスコープは、高速信号を測定するために、時間間隔をずらしてサンプリングすることでサンプリングレートの高速化を実現したオシロスコープです。高速な信号の細かい特徴を捉えることができます。
メーカーや機種によって異なりますが、基本的なオシロスコープの使い方は下記のとおりです。
周波数・電圧を確認してみる方法は、カーソル(Cursor)ボタンを押してつまみで調整する方法と、測定(Measure)ボタンを押す方法があります。波形はUSBなどに保存可能です。USBをオシロスコープに挿し、印刷ボタンを押すと自動で保存されます。
製品名 | 入力CH数 | 周波数帯域 | サンプリング速度 | メモリ長 |
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DS-8000シリーズ | ~8 | ~1GHz | ~5GS/s | ~120Mpxs |
「ViewGoⅡ」DS-5600Aシリーズ | ~4 | ~500MHz | ~2GS/s | ~5Mpxs |
「ViewGoⅡ」DS-5400Aシリーズ | ~4 | ~200MHz | ~2GS/s | ~500kpxs |
DS-5100Bシリーズ | 2 | ~100MHz | ~1GS/s | ~1024kpts |
DS-8000シリーズは、最高周波数1GHz、最大チャンネル数8CH。電源起動後約30秒で立ち上がります。常時高分解能12bitのADCを採用し、低ノイズで細かい波形を表示させることができるので、自動車やコンポーネント、半導体の設計・生産・品質保証部門にも適しています。
DS-5600Aシリーズは、高速でのサンプリングを維持しながら、長時間の波形を取り込むことができます。DS-5400Aシリーズは手頃な価格の日本製で、DS-5100Bシリーズはコストを抑えつつ充実した機能と鮮明な表示が特徴です。
本社所在地 | 東京都杉並区久我山1-7-41 |
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公式URL | https://www.iwatsu.co.jp/ |
製品名 | 入力CH数 | 周波数帯域 | サンプリング速度 | メモリ長 |
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DHO1000シリーズ | アナログ2・デジタル4 | 70MHz~200MHz | 2GSa/s | ~100 Mpts |
DHO4000シリーズ | 4 | 200MHz~800MHz | 4GSa/s | ~500 Mpts |
DS70000 | 4 | 3GHz・5GHz | 20GSa/s | ~2Mpts |
DS8000-Rシリーズ | 4 | 1 GHz~2 GHz | 10 GSa/s /5 GSa/s | ~500 Mpts |
MSO8000シリーズ | 4 | 600 MHz~2 GHz | 10 GSa/s | ~500 Mpts |
DS8000-Rシリーズは、自社開発したASICチップ(カスタムチップ)とUltraVision IIプラットフォームを搭載。液晶画面がなく薄くてコンパクト。-40°Cの環境でも作業が可能です。パソコンなどのモニタに接続して使用することができます。
MSO8000シリーズはオシロスコープでのアイ・ダイグラム測定でデジタル信号の伝送品質を視覚的に表示できるので、デジタル信号の質を頻繁に確認しなければならない場合にも適しています。
MSO/DS7000シリーズは、オシロスコープ、ロジック・アナライザ、FFTアナライザ、プロトコル・アナライザ、波形発生器、電圧計、周波数カウンタ/積算器の7種類の測定器をひとつにまとめました。
本社所在地 | 東京都中野区沼袋2-37-1 トレッタ501 |
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公式URL | https://jp.rigol.com/ |
製品名 | 入力CH数 | 周波数帯域 | サンプリング速度 | メモリ長 |
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WavePro HD | 4 | 2.5GHz~8GHz | ~20GS/s | 50 Mpts~5Gpt |
WaveRunner 8000HD | アナログ8・デジタル16 | 350 MHz~2GHz | ~10GS/s | 50 Mpts~5Gpt |
HDO6000B | 4 | 350 MHz~1GHz | ~10GS/s | 50Mpts~250Mpts |
WaveRunner 9000 | 4 | 500MHz~4GHz | ~40GS/s | 16Mpts~128Mpts |
WaveMaster/SDA 8 Zi-B | 4 | 4GHz~20GHz | ~80 GSa/s | 32Mpts~512Mpts |
T3DSO3000シリーズは250Mポイントメモリを搭載し、アナログ帯域幅で200MHz~1GHzの4チャンネルモデル。WaveSurfer 3000zシリーズは10.1インチのタッチパネルで使いやすさを追求した多機能かつ低価格モデルです。
WaveRunner 8000HDシリーズは2GHz広帯域と12ビットの高分解能、8チャンネルの多チャンネルを持ち、WaveMaster8Zi-Bシリーズは広帯域信号捕捉、10~100倍の高速解析、20倍の高速外部データ転送を実現しています。
本社所在地 | 東京都府中市緑町3-11-5 芳文社府中ビル3F |
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公式URL | https://teledynelecroy.com/japan/ |
製品名 | 入力CH数 | 周波数帯域 | サンプリング速度 | メモリ長 |
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DLM3022/DLM3032/DLM3052 | 2 | DLM3022:200MHz/DLM3032:350MHz/DLM3052:500 MHz | ~2.5GS/s | ~125Mpt |
DLM3024/DLM3034/DLM3054 | 4(ロジック入力使用時は3) | DLM3024:200MHz/DLM3034:350MHz/DLM3054:500MHz | ~2.5GS/s | ~125Mpt |
DLM5034/DLM5054 | 4 | DLM5034:350MHz/DLM5054:500MHz | ~2.5GS/s | ~125Mpt |
DLM5038/DLM5058 | 8 | DLM5038:350MHz/DLM5058:500MHz | ~2.5GS/s | ~125Mpt |
DLM5000シリーズは、好評を得たDLM4000の機能・操作性を継承しながら、低ノイズ化・高感度化、タッチパネル搭載、メモリの拡張をプラス。1台でアナログ8チャネル+ロジック32bitの入力も可能です。DLM3000シリーズは、小型軽量コンパクトで大容量ロングメモリーと豊富な解析機能が好評だったDLMシリーズにタッチスクリーンを搭載し、メモリを最大500Mポイントまで拡張しました。
本社所在地 | 東京都八王子市明神町4-9-8 京王八王子明神町ビル |
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公式URL | https://www.yokogawa.com/jp-ymi/ |
製品名 | 入力CH数 | 周波数帯域 | サンプリング速度 | メモリ長 |
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MT-775 フルカラーハンディオシロスコープ | 2チャンネル+デジタルマルチメータ機能(RMS) | 600MHz | ~250MS/s | 入力ごとに6000pt |
MT-770 フルカラーハンディオシロスコープ(生産終了品) | 2チャンネル+デジタルマルチメータ機能(RMS) | ~20MHz | ~100MS/s | 入力ごとに6000pt |
MT-780 デジタルオシロスコープ(生産終了品) | 2 | 25MHz | ~100MS/s | 6k pt/チャンネル毎 |
MT-770、MT-775はともに、デジタルマルチメーター機能搭載のハンディタイプ。USB通信機能を搭載し、パソコンへのデータ転送や、専用アプリケーションによるデータ解析も可能です。
MT-780は2チャンネル対応のフルカラー表示。電子回路のトラブルシューティングや保守点検、教材用としても適しています。
本社所在地 | 長野県上田市御所431-6 |
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公式URL | https://www.mothertool.co.jp/ |
製品名 | 入力CH数 | 周波数帯域 | サンプリング速度 | メモリ長 |
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TBS1000Cシリーズ・デジタル・ストレージ・オシロスコープ | 2 | ~200MHz | 1GS/s | 20kpt |
TBS2000Bシリーズ・デジタル・オシロスコープ | 2または4 | ~200MHz | ~2GS/s | 5Mpt |
2シリーズMSOミックスド・シグナル・オシロスコープ | 2または4 | ~500MHz | ~2.5GS/s | 10Mpt |
3シリーズMDOミックスド・ドメイン・オシロスコープ | 2または4 | ~1GHz | ~5GS/s | 10Mpt |
4シリーズMSOミックスド・シグナル・オシロスコープ | アナログ4または6、デジタル最大32または48(オプション) | ~1.5GHz | 6.25GS/s | 31.25~62.5Mpt |
TBS2000Bシリーズ・デジタル・オシロスコープは9型のディスプレイを搭載し、ひとつの画面で多くの信号観察が可能。6シリーズ B MSOは業界ハイクラスの低ノイズで信号の細部まで観測できます。
MDO4000シリーズは、優れた確度の測定機能を備え、他社のツールよりも詳細な設計解析が可能。オシロスコープ本来の性能を持ちながら拡張性も備え、16のロジック・チャンネル、50MHzの任意波形/ファンクション・ジェネレータ、6GHzのハードウェア・スペクトラム・アナライザを取り入れることができます。
本社所在地 | 東京都港区港南2-15-2 品川インターシティB棟6F |
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公式URL | https://www.tek.com/ja |
製品名 | 入力CH数 | 周波数帯域 | サンプリング速度 | メモリ長 |
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デジタル・オシロスコープ AD-5143 | 2 | 25MHz | ~250MS/s | 512kpt |
「見やすくて使いやすい」シンプルな操作の基本計測器を追求したオシロスコープで、物理や電気・電子工学の実験、研究・開発・製造の設備、電気・電子設備の点検やメンテナンスにも使用できます。成績書の発行が可能です。
本社所在地 | 東京都豊島区東池袋3-23-14 |
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公式URL | https://www.aandd.co.jp/ |
製品名 | 入力CH数 | 周波数帯域 | サンプリング速度 | メモリ長 |
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InfiniiVisionオシロスコープ | - | 50MHz~1.5GHz | ~1GSa/s・~2GSa/s・~4GSa/s・~5GSa/s・~20GSa/s | 200kpts・1Mpts・2Mpts・4Mpts |
Infiniiumリアルタイムオシロスコープ | - | 500MHz~110GHz | ~16GSa/s・~20GSa/s・~80GSa/s・~128GSa/s~・160GSa/s・~256GSa/s | 800Mpts・1.6Gpts・2Gpts |
DCA等価時間(サンプリング)オシロスコープ | - | 18~100GHz | -・~250kHz・60 kHz・250kHz | - |
ハンドヘルド/モジュラー/USBオシロスコープ | - | 100MHz~1GHz | ~1GSa/s・~2GSa/s・~5GSa/s | 120kpts・2Mpts・4Mpts・32Mpts |
InfiniiVisionデジタルオシロスコープは、キーサイトの特許技術を基に製造し、高速の波形更新レートを実現。オシロスコープ、任意波形測定器またはファンクション・ジェネレーター、周波数応答アナライザ(FRA)–ボード線図、デジタル電圧計、周波数カウンター、プロトコル・アナライザ、ミックスド・シグナル・オシロスコープ(MSO)など、最大7種類の測定器を1台に統合させることも可能です。
本社所在地 | 東京都八王子市高倉町9-1 |
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公式URL | https://www.keysight.com/jp/ja/home.html |
製品名 | 入力CH数 | 周波数帯域 | サンプリング速度 | メモリ長 |
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MP2110A BERTWave | 1/2・4 | 水平システム:トリガロック入力0.1~15.0GHz・光チャンネル:SMF入力35 GHz・MMF入力25 GHz | 250kSa/s | - |
サンプリングオシロスコープ最大4chとBERT最大4chを選択搭載できるAll In One測定器で、10G~800Gの光モジュールの製造評価に適しています。高速・高性能で、試験時間の短縮や歩留まりの改善、設備投資費の削減にもつながります。
本社所在地 | 神奈川県厚木市恩名5-1-1 |
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公式URL | https://www.anritsu.com/ja-jp/ |
製品名 | 入力CH数 | 周波数帯域 | サンプリング速度 | メモリ長 |
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DCS-1052B 2チャンネル 50MHz 1GS/sデジタルオシロスコープ | 2または4 | ~50 MHz・~70MHz・~100MHz | ~1GS/s | ~10Mpts |
DCS-1000B 50/70/100MHzデジタルストレージオシロスコープ | 2または4 | ~50 MHz・~70MHz・~100MHz | ~1GS/s | ~10Mpts |
MDO-2000シリーズ ミックスドドメインオシロスコープ | 2または4 | ~100MHz・~200MHz | ~1GS/s | ~10Mpts |
DCS-2000E 70/100/200MHz デジタルストレージオシロスコープ | 2または4 | ~100MHz・~200MHz | ~1GS/s | ~10Mpts |
GDS-3000シリーズ デジタルストレージオシロスコープ | 2または4 | ~150MHz・~250MHz・~350MHz・~500MHz | ~2.5 GS/s・~4GS/s・~5GS/s | ~25kpts |
DCS-1052B、DCS-1000Bは、電子回路の設計・実験や向上などで使用できる、ベーシックなオシロスコープ。
MDO-2000Eシリーズ、DCS-2000E、GDS-3000シリーズ、GDS-2000Aシリーズは、広帯域・高サンプリングレートを持つミドルクラスのオシロスコープ。GDS-300/200シリーズは、バッテリーオペレーションのマルチメータが付いたハンディタイプのオシロスコープです。
本社所在地 | 神奈川県横浜市港北区新横浜2-18-13 藤和不動産新横浜ビル7F |
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公式URL | https://www.texio.co.jp/ |
オシロスコープを選ぶ際は、以下のポイントをチェックしましょう。
測定の精度を上げるために、周波数帯域を確認。システム帯域幅が大きくなるほど測定の精度が高くなります。また、サンプリングレートの数値が高くなるほど、ディスプレイに表示される波形の解像度もアップします。
通常、2~4つのチャンネル数を持つものが多いのですが、はじめて使用する場合や単純な電子工作であれば、操作が比較的容易な2チャンネルでも十分。高度な電子工作を目指す場合は、3~4チャンネルを選ぶのがおすすめです。
電圧感度や時間軸設定などの基本設定を波形に応じて自動で設定してくれるオートセットボタン。初心者は、このオートセットボタンがついているものが安心でしょう。
オシロスコープでは、細かい波形を比較することが多いため、見づらい画面では長時間の作業に支障が出ます。画面は少し大きめで、かつ、比較がしやすいよう、波形がカラー表示されるものがいいでしょう。
計測したデータがパソコンで保存・共有できると、さらに扱いやすくなります。データの保存・共有が簡単なタイプの方が用途が広がるので便利です。