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オシロスコープによるEMIデバッグとは

そもそもEMIとは

EMIとは電磁波障害(ElectroMagnetic Interference)を示す言葉で、電子機器や電気機械などが周囲に不要な電磁ノイズ(無線周波数)を放出する現象のことです。RFI(無線周波数干渉)と呼ばれることもあります。EMIの発生源は、スイッチング電源やパソコンなどの電子機器をはじめ、雷雨や太陽放射、宇宙雑音などさまざまです。

電子機器などから発生した電磁ノイズが周辺の機器に干渉することで、電子機器や電子回路が誤作動を起こしたり、無線通信や通信ケーブルの信号が乱れたりなどの問題を引き起こす可能性があります。物理的な損害や人身事故につながる恐れがあるため、EMI対策が重要にとされているのです。また、EMIには規格が定められており、ほとんどの電子機器や電子機器のメーカーではEMIの規格に適合するためのテストが行われています。

EMIデバッグとは

EMIデバッグとは、検出されたEMIの問題を解決するためのプロセスのことです。EMIデバッグは近磁界プローブとオシロスコープを使用するのが一般的で、近傍界で行われます。ちなみに近傍界とは、電磁波の放射源から近い領域のこと。波長の長さをλとしたときに、λ/2πに満たない領域が近傍界となります。

EMIデバッグの目的は、不要な電磁ノイズを除去して電子機器をEMI規格に準拠させることで、そのために不要な電磁ノイズがどこで発生しているのかを把握しないといけません。そこで近磁界プローブとオシロスコープを使用し、不要な電磁ノイズが発生している場所を特定します。

EMIデバッグのプロセス

EMIデバッグのプロセスは、次の3つのステップで行われます。

  • 1.EMIの検出・特性評価
    不要な電磁ノイズの周波数やレベルを検出し、さらに発生源の特定に役立つ挙動を示しているものがないかを調べます。
  • 2.電磁ノイズの発生源の特定
    どのコンポーネントやワイヤー、トレースなどが電磁ノイズの発生に関係しているのかを特定します。
  • 3.電磁ノイズの除去・低減
    電磁ノイズの発生源を特定したら、グランド接続やシールドなどの方法で不要な電磁ノイズを除去もしくは低減します。

近磁界プローブとは

近磁界プローブはEMIデバッグで用いられる最も一般的なツールの1つで、主に「磁界プローブ」と「電界プローブ」の2つのグループに分けられます。EMIデバッグで良い結果を得るには、適切なプローブを選択・使用することが重要です。

磁界プローブ

磁界プローブはループ形状になっているのが一般的で、ループが信号に対して90度、または磁界がループを通過するときに最大応答を得られます。最小応答を得られるのは、ループが信号に対して平行なときです。

磁界プローブは、ループのサイズに応じて分解能と感度がトレードオフになります。たとえば、ループが大きいと感度が高くなる一方で、空間分解能は低下。反対にループが小さい場合は、感度が低くなりますが、発生源の位置の絞り込みがしやすくなります。

磁界プローブには非ループタイプも存在し、空間分解能が非常に高いのが特徴。非ループタイプの磁界プローブは、EMIデバッグのほかに、ICもしくは貫通コンデンサの表面上の電流の測定にも使用できます。

電界プローブ

電界プローブには大面積のものと小型の近電界プローブがあり、大面積の電界プローブは表面の広い構造体が放出する電界を測定するのに使用されます。小型の近電界プローブは空間選択度が非常に高いのが特徴で、1mm未満が一般的。それにより、プリント基板上において単一の細いトレースまで位置を絞り込みたいときによく使用されます。

EMIデバッグにおけるオシロスコープの使用方法

オシロスコープには、EMIデバッグに役立つ機能として「スペクトログラム」「周波数マスクトリガ」「ピークリスト」が搭載されています。それぞれの機能の特徴について見ていきましょう。

スペクトログラム

EMIデバッグでは周波数ドメインの測定が必要となり、タイムドメインから周波数ドメインへの変換を行う際は高速フーリエ変換(FFT)が用いられます。スペクトログラムとは、フーリエ変換を使用して音声波形を周波数成分に分解したスペクトルを、さらに時間方向に並べたものです。

フーリエ変換では信号の標準的な周波数ドメインがパワー対周波数として表示され、そこにスペクトログラムで時間情報を付与することでパワー対周波数対時間が表示されます。

スペクトログラムで使用されるカラーテーブルやマッピングを調整して、対象の信号をより明瞭に表示したり、ユーザーの好みに合わせて表示させたりすることも可能。スペクトログラムは時間変動する信号やノイズフロア付近の低レベルの連続信号などを視覚化するのに役立つ機能です。

周波数マスクトリガ

EMIの問題の多くは、検出や解析が難しい間欠的な信号を伴います。周波数マスクトリガでは、スペクトラム波形に対してユーザーがパワー対周波数のマスクを定義でき、定義した条件でトリガをかけることが可能。マスクに違反するとトリガによってオシロスコープの捕捉が停止され、捕捉したデータを詳細に解析することができます。まれにしか発生しない現象や異常なスペクトラムを捕捉するのに役立つ機能です。

ピークリスト

EMIデバッグにおいて、スペクトラム内の高いレベルの信号もしくはピークの信号を特定することが重要になります。その理由は規制のしきい値に違反することがあるほか、これらの振幅の大きい信号は問題を引き起こすことが多い傾向にあるからです。

スペクトラム内の高い信号はグラフ内から手動で探す、もしくはカーソルやマーカーを使用するなどの方法で見つけることができます。ただし、時間がかかるほか、間違いも多いのが難点です。比較的新しい機種のオシロスコープであればピークサーチまたはピークリスト機能が搭載されており、最高振幅の信号と対応する周波数の一覧を自動で作成できます。

EMC試験とは

EMC試験とは、EMI試験とEMS試験の2つを包括したものです。電気・電子機器などにおいて、ほかの機器の動作を妨げる不要なノイズを出さないか、他の電磁妨害からの免疫能力を有しているかを評価するために行われます。

EMS試験(イミュニティ試験)

EMS試験とは、電磁妨害のある環境下でも正常に動作できるかどうか、製品の電磁妨害耐性を確認するための試験です。電磁妨害の例としては、ラジオやテレビの受信妨害による乱れなどがあげられます。

EMI試験(エミッション試験)

電気機器から放出される不要なノイズ(エミッション)は空間や電線を伝搬し、ほかの機器の動作を妨げる電磁妨害(電磁障害)を引き起こすことがあります。電磁妨害の発生を防ぐために製品にはエミッションの規格が定められており、EMI試験は製品から放出されるノイズのレベルが規格で定義された制限値を超えていないか確認するための試験です。

EMI試験には放射性妨害波測定(放射エミッション)と伝導性妨害波測定(伝導エミッション)という2種類の試験があり、放射性妨害波測定では空間に放出されるノイズの強度を測定。伝導性妨害波測定は電源端子から放出されるノイズの強度を測定する試験です。

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